元知人

仕事柄、できの良いウェブサイトが話題になってtwitterやブックマークサイトでシェアされて自分の目に入ることは多くて、ある日見かけたサイトを作った会社が僕がウェブ業界に入ったときの恩師というか師匠というか友人であった人が在籍していたはずの会社だったので、その会社のサイトを見てみたら、もうその人の名前はなかった。

今は疎遠になっていて懐かしく感じ、その人の名前で検索をかけてみるとその人はこの業界でいっぱしの、僕からすると言わば雲の上の人になっていた。

駆け出しのウェブ制作者だったころに憧れていたキレッキレのサイトを作る人達と今やtwitter上でふざけながら談笑し、お互いの賞賛をリツイートし合うような界隈の人となっていて、スタバやNORTH FACEなど自分も日常的に利用している大手ブランドも手掛けるランクの業界人。

そういえば最後に送ったメールには返事ももらえていなかったことを改めて思い出した。

あの時点で僕はもう、その他大勢になっていたのだろうと思う。


彼は、僕が大きめの転職をするにあたってウェブ系専門学校に短期入学した際の担当の講師だったのだけど、すでに独学である程度できる状態で入学した僕は彼が担当した生徒の中では相対的に飛び抜けて優秀だったので技術的にも頼られ、以前には仕事もいくつかご一緒した。

年齢が僕のほうが上だったからかプライベートでは兄貴的なポジションとして頼られ、お互いに肉が好きだったので美味しいお肉やさんを見つけたら一緒に肉を食いに出かけた。

彼が恋愛や結婚、転職などで悩んだりすると、ときには家に押しかけてきて、当時のアパートの駐車場で大学生のように遅くまで話し込んだりもした。

でも人格形成の元となっている趣味や嗜好のアンマッチは当時から感じていたし、それはたぶんお互いわかっていたのでそれを前提とした距離感は互いに保っていたし、今こうして疎遠になっているのは残念ではあるけれども当然にも感じ、ひとえに僕がそういう人間なんだろう、と静かに受け止める。


結果だけで論ずると、僕は長く人と付き合うことができない。

僕の理解の中では、ある程度以上仲良くなると人は離れていくものだと認識していて、仲良くなった時点での僕という人材が、なんらかの失望を相手に与えるのだと解釈している。

自己分析としては、ファーストコンタクトで与えた期待値を、僕が下回る瞬間が必ず来るのではないかと思っている。あれ、この人、何もないぞ?と気づく瞬間が訪れたとき、積極的に関係を継続することを放棄されるのではないか、と認識している。

その瞬間が相手に訪れたのではないかと自分でわかるときはあって、だからと言ってそれをリカバリすべくフォローすることはないし、こちらから追いかけることもほぼ無いし、ときにはこちらから距離を置こうともするので、それも一因だとは思う。

人にすがって追いかけた経験はあまりなく、それがこちらも相手にモチベーションを持っていないと感じさせて、離脱を加速させる傾向もあるのだろうと思う。

人が離れていくのは寂しいなと思うけれど、それをつなぎとめるだけのものが自分に無いことや、それならそれで泣いてすがることもできない以上、引き止めることも難しいし引き止めることに意味もないと思うので、淡々と受け入れることを決めている。

それでも近くに居続けてくれる方は極稀にいて、とてもありがたい存在だと思っている。