恋愛至上主義

前の記事で書いたドイツ人の女性と会って色々と話しているうちに、日本に来てから仲良くなった人の話になって、つい最近付き合った人がいる、という話を聞きました。そしてその彼とはもう別れて今は友達です、とも。

それは僕が彼女と出会ったゲストハウスに来ていたお客さんの一人で、彼女と彼がその日の時点で仲良く話していたことを憶えていたから、さもありなんと思いつつも、なんだか一瞬もやっとしてしまいました。

沖縄で分かれるときに東京でまた会おうと約束して、その約束が自分にとってとても楽しみなものだったから、彼女にとってもそうだと思いこんでいたけど、なんてことない、東京の彼氏に会うついでだった(かも)と知らされてがっかりした、のかな。

僕は根本的には異性間で完全な友情は信じきれていなくて、友情だよと言い切る関係性は、自分にとって異性としての魅力に欠ける相手にそれを求められないための詭弁か、または魅力的だとしても付随する様々な不都合を考慮して踏みとどまっている場合がほとんどだと思っています。

だから自分と似たような出会いをした異性の中から彼女がそういう関係の男性を見出し、「相手が本気になってしまったからもう別れました」と言われて、自分はとっくにその選抜に落ちていたか、またはその検討の俎上に乗ることさえもう無いのだという事実を思い知ってそれが少し響いたんだろうと思います。

それでも彼女は僕との約束を大事にしてくれてたし、たくさんの時間を僕にもちゃんと割いてもらってたからそれで十分はなず。

友達と彼氏という関係性に勝手に優劣を見出してるのは僕で、僕が単に恋愛至上主義なだけなのかもしれません。

とはいえ、普段ストーリーを上げない彼女が少し前に突然ストーリーを上げたのはそういうわけか、とか、自身が写った写真を嫌う彼女が一度だけ自分の写真をストーリーに上げていて、それを先のストーリーとともにハイライト化しているのはそういうわけだったか、と腑に落ちて。

その「特別」を共有される身分に至れないのは彼氏じゃないからだとすれば、そこには超えられない壁があって、寂しいと思う気持ちは生じてしまう。そのなんとも言えない気持ちをここに吐露している次第です。

いや普通に考えるとお前なに言ってんだwww、っていう、単なる贅沢の話ですね。


そして、上のもやもやからなかなか開放されない理由がもう一つ。

彼女は将来的に日本で働くことを希望しています。その選択肢の一つとして、国がやってる外国人雇用のプログラムに応募していました。

ところが二次審査の書類として必要な推薦状2通のうち一通が手に入らず、それを諦めかけていました。

推薦状は一般的に卒業大学の恩師と、前職の元上司にもらうのが通例らしく、彼女もそれにならい彼らに打診していたのですが、二人のうち一人からは返信さえない有様で、締切も迫っていたので今回はもう残念だけどダメだと思う、と話していました。

でも、せっかくの機会だし彼女は三ヶ国語を操る才女なので応募さえできれば採用の確率は高いはず、もったいないと思って僕なりに調べた結果、彼女の性格やスキル等を知っていて、そのプログラムに役立つであろうことを推薦できる内容なら誰が書いたものでも推薦状として機能する、という情報を得ました。

そこで彼女にそれを話して、「ワーホリ中に日本で働いたときの上司の誰かに書いてもらえるのでは?なんなら僕でも、あなたがゲストハウスに来てくれたときに通訳としてとても助かった的なことを書くのでもいけると思う」と聞いてみたところ「締切はもう明後日で、ドイツの日本大使館に郵送で提出しなければならないので間に合わない。残念だ」という旨の返信が返ってきました。

本人が諦めてるならもうしょうがないと僕も納得したのですが、次の日になって彼女からコロナ関連で締切が伸びる可能性があるから一応トライしてみてよいか、推薦状をあなたに書いてほしい、という打診が来ました。

なので大至急推薦状を作成し、直筆のサインが必要なのでプリントアウトしたものにサインしてスキャンしてPDF化し、彼女に送りました。

彼女がそれをまずはメールで送って連絡をとってみたところ、なんと応募OKだとの返事をもらったそうです。結果僕は彼女の日本で就職する可能性に関して大きな望みをつないだ形となりました。

でも、それっきり。

こんなことは最初から見返りを求めてやることでは当然ないけれど、ありがとうと言われてそれっきり。

僕は彼女の将来のことを思って必死に調べて、彼女の可能性について少しでも広がるよう頑張ったつもりなんだけど、でもそれ、彼女にとっては意外と大したことなかったんだなあ、という思いに今包まれています。

「あなたに推薦状を書いてほしい」と、他の上司たちではなく僕に言ってきたことを僕は「あなたに」をクローズアップして喜んでたけど、「(事情を既に知ってて最も頼みやすくレスポンスも早かろう)あなたに」だよな、と思い直して。

結果としてすごく有益な行為だったことは間違いなくてそこに満たされる部分はあるけど、それに対して彼女にもっと大事にしてもらう理由の一つとはなりえなかったと残念に感じて、じゃあ俺っていう人間の存在はなんだろう。俺って人間の価値はどこらへんなんだろう、とか。

彼女の中で彼氏より優先順位が低いとしても、それがイコール彼女の中での僕の価値の低さってことではないと思うし、そう考えてしまうのはひとえに僕自身が恋愛至上主義者で、人は恋愛対象が一番大事で、一番評価していると解釈しているからですよね。

もやもやとずっと考えてしまう自分にも少しうんざりしていて、なんというかもう、気持ちは色々最低です。主に僕がね。きっと彼女の中ではちゃんと「頼りになる友達」ではあるはず。それで十分なはずなんです。

でも相変わらず僕は、誰にとっても「いいヒト」で、便利おじさんですよね。なんでそうだとわかってるのにいい顔しちゃうんだろ。それで見返りがないと嘆くのもあさましくて、頭わるい。便利おじさん辞めたいけど、でも少しでも好きだと思った人のことはやっぱり大事にしたいんですよね。

こいついつもこんなことばっか考えてんな、って思いますよね。

自分でも思います。そのとおりです。もうわけわからんわ。